


コックスバザール、海が続くその先へ
このたび、バングラデシュのコックスバザールに、弊社の新たな水産加工工場を開設いたしました。本コラムでは観光地でも知られているコックスバザール地域をご紹介いたします。
コックスバザールは、ただの海辺の町ではありません。
バングラデシュの南東、静かな海が広がるこの地には、世界最長の自然の砂浜があります。長さはおよそ120キロで、どこまでも続く海と空。その間に、静かに横たわる砂の道。まるで地球の端まで歩けるような錯覚を覚えます。
早朝、波の音に混ざって聞こえるのは、漁師たちの声と祈りの呼びかけ。
浜辺では色とりどりの漁船が並び、潮の香りとともに魚市場がにぎわいを見せます。ここでは観光よりも、暮らしが主役。訪れる人もまた、その静かな営みに自然と溶け込んでいきます。
高級なリゾートは少なく、派手な娯楽もありません。
けれど、潮風に吹かれながら歩くだけで、心がほどけていくのを感じます。海を見ていると、自分の悩みがいつのまにか小さくなっているのです。
そしてこの場所には、もう一つの顔があります。
ロヒンギャ難民の多くがこの地域に避難して暮らしています。波の音の裏には、静かな痛みもあるのです。コックスバザールは、美しさと重さが共存する場所でもあります。
旅をする意味を、少しだけ考えさせてくれる町。
もし、心が疲れたら、ただ海を見に行くだけでいい。
この長い長い浜辺は、きっとあなたの足音を静かに受け止めてくれます。